*琥侑side*
「ただ…」
俺はそう言って、空を仰いだ。
真っ赤な赤い空の下から、紫色が微かに見える。
「あのままじゃアイツの想いが可哀相だろ」
……ヒメを好きだった気持ち。
それはきっと、俺やヒメが考えている以上に大きいものだろう。
それを無理やり押し込めて、無しにするなんて……
そんなの、今までの想いに失礼だ。
「……琥侑」
ヒメは小さく、でも確かに俺の名前を呼んだ。
「……何?」
俺はゆっくりと、抱き締める力を緩める。
しかしヒメは俺から離れようとしない。
「あたし……てんちゃんの告白、ちゃんと断ったから。琥侑が好きだからって……ちゃんと断ったから」
そう言って、俺の背中に腕を回すヒメ。
ヒメのその言葉と行動に、俺は思わずどきんと胸が鳴った。


