あたしはというと客が帰って行った事も気付かずに、未だフリーズ中。 「ヒメ」 そんなあたしに気付いたのか、琥侑が不機嫌そうに名前を呼んだ。 「……ぅえっ‼」 琥侑の声に、すぐさま彼のほうへ向いた。 その瞬間、ぐらりとした感覚があたしを襲う。 ……あ、れ? 何、これ…… 「ぁ……」 ボンヤリとした頭の中。 ゆらゆらと蜃気楼のように琥侑がうごめく。