「……なに」
あたしが眉をひそめて琥侑を見てたもんだから、琥侑は不機嫌そうにあたしを見てきた。
「べ、別に?」
「ならいいけど」
ほら……また。
こういう時、琥侑はいつも小バカにしたように鼻で笑う。
だけど、今日は違う。
そんな素振り一切見せなかった。
やっぱり、おかしい。
絶対おかしいよ。
――カランカラン♪
軽やかな音をたてて、重たいドアがゆっくり開く。
入ってきたのは、あたし達と同じくらいのカップル。
「いらっしゃいませ」
琥侑は顔色一つ変えず、カップル客を迎えた。
……店員として、まずありえない対応。


