「っねえ!アンタ……」
あたしはヤツに声をかけようとするけれど、息が切れてうまく声が出ない。
後ろを振り返ると、遠くのほうに呆然とした様子のてんちゃんが見える。
……どんどん離れてゆくてんちゃんとの距離。
パッと一瞬、電灯を横切ったときに見えた姿で確信した。
「こ、琥侑っ!?」
あたしが慌てた様子でそう言うと、パタッと走るのをやめた。
「っわ‼」
琥侑が急に止まったせいで、あたしは琥侑の背中に思い切り頭をぶつけてしまった。
いったぁ~い……
ジンジンと痛む頭を両手で押さえ、琥侑の背中をキッと睨む。
「ちょっと急に止まったら」
『危ないでしょ』
そう言おうとしたが、言えなかった。
……それどころじゃなくなってしまったから。


