面食らったような顔がすぐ近くにあって、少し笑ってしまった。
改めて意識するとやっぱり、ふわり、と甘い香りがする。なんで気がつかなかったんだろう。
「・・・なんだ」
ヘリオトロープが不気味そうに身を引く。
私は逆に追いかけるように身を乗り出した。
「宮廷庭師って花と触れる仕事だし、沢山他の良い匂いもするけど・・・きみ、この花と同じ匂いがする」
言ってしまってから、しまった、と口を押さえる。
人の匂いだなんて。別に嗅ごうと思って鼻に入ってきた訳では無いけれど、これではただの変質者ではないか。
絶対に気持ち悪いと罵倒される。そう思って肩を竦めてヘリオトロープを見やると、逆にヘリオトロープが居心地悪そうに口元を押さえていた。
「あ、いや、好きな花だとか言っていたから・・・妙な気分になってしまっただけだ」
「べ、別に匂いが同じってだけで!」
「そうなんだが、いや、そうだな、お前は知らなかったな・・・」
良く意味のわからないことを呟いた後、ヘリオトロープが私の左耳の辺りを見つめながら話題を変えた。
「兄に貰ったと言っていたが、どういう経緯で」
「わからない。何故か突然・・・」
ヘリオトロープは微かに息をついて私の腕を指差す。
「恐らく、これと同じだ。俺だって意味もなくこんな物をお前にやったりしない。お前の兄だって、なんの理由もなくお前に花をやったりしないだろうよ」
なんだ。突然何の話を始めたのかと思ったけれど、ただの自分がこれを買ってきたことに対する言い訳と照れ隠しか。今更。


