謁見の間までの、長い長い道のりを、リーンの後ろについてひたすら無言で歩く。
「おはようございますメイド長」
「おはようございます、お疲れ様です」
「おはよう、リーンさん」
「はい、おはようございます」
前を歩くリーンに、すれ違う人々がにこやかに声をかける。
その一方で、意識して私を視界に入れないようにしているのが、嫌でもわかる。
それだけなら、別にいい。私だって、じろじろと見られたい訳じゃない。
だけど、彼らとすれ違った後、決まって後ろからこそこそと耳障りな話し声が聞こえるのだ。
「―――籠り姫だ。あの姫様、部屋から出てきてるぞ」
“籠り姫”。私の、城内で呼ばれているらしい、渾名だ。
好きであんなところで暮らすようになったんじゃないのに。
まあ、私が感情を出さないのも、この呼び方に拍車をかけているのだろうけれど。
「容姿は麗しいのにね」
「やっぱり少し怖いわよね」
「それに、あの瞳の色と言ったら・・・」
ああ、煩い。
本当に・・・煩い。
私だって、嫌いだ、こんな、私。
そう、ずっと『言って』るっていうのに。


