「だろ」
どことなく今までと違う響きを含んだ声に驚いて顔を上げる。
それと比例するように顔を背けられたが、ほんの一瞬だけ目の端に笑っているのが見えたような気がした。
もぐもぐと咀嚼しながらもそのままじーっと横顔を見つめているとじろりと睨まれた。
「・・・なんだ」
いや、やっぱり気のせいだ。初めと変わらない、もしくは初めよりももっと顔を不機嫌そうにしかめている。
その顔を確認してから、私はぱっと顔を逸らした。
「なんでもない、ただ、さっきのテントみたいなやつ、いっぱいあるなと思って」
訝しげな視線を向けられているのを感じたけれど、結局それに対しては何も言わずにヘリオトロープは口を開いた。
「あれは露店だ」
「ろてん?」
初めて聞く言葉をただオウム返しする私にじろりと目をやった後、ヘリオトロープは話を続ける。
「祭りなどの時に臨時で出す店だ。今日はお前の成人式だからな、この騒ぎに乗じて儲けてやろうという算段なんだろう」
「そうなんだ」
改めて見ると街道いっぱいにずらっと色々な露店が並んでいる。
さっき声をかけられた店のように食べ物を売っている店もあれば、そうではない店もあるようだ。
物珍しげに眺めていたのがわかったのだろうか、ヘリオトロープが1度だけ大きくため息をつくと、ずんずんそちらに向かって歩き出した。
「待って、どこ行くの」
「どこって、お前行きたいんだろう」
向けられた視線にとりあえず首を縦に振る。


