「すみません、それ2つ頂けますか」
「はいよー、200ルティね」
聞いたことのない単語と見たことのない硬貨が目の前を行き来する。
「まいどありがとねー、嬢ちゃんとうまくやるんだよー」
陽気に笑いながら手を振るおじさんに背を向けた途端、顔が元の仏頂面に戻った。
「・・・きみあんなに愛想笑い上手なんだね」
「あ?あのくらいできないと世の中やっていけないぞ」
なんとなくつまらない思いを抱きながら、ふうん、と相槌を打つ。
ヘリオトロープが貰った紙袋に手を突っ込み、何かを取り出して口にくわえた。
そのまま私に向かって紙袋を突き出す。
どうしたらいいのかわからなくて固まっていると、ヘリオトロープが咀嚼をやめてため息をついた。
「やる」
「え?あ、ありがと・・・」
ほとんど押しつけるような形で渡されたその紙袋はなんだかほんのりと温かい。
首を傾げつつおそるおそる中のものを出してみる。
ほかほかと湯気を立てているのは茶色く細長い形状のパンのようなものだった。砂糖のコーティングがランプに反射して、てらてらと表面が光っている。
「パン?」
「パンは知ってるのか。似たようなものだ。アモルデという菓子だ」
「へぇ・・・」
1口かじってみる。
外はぱりっと香ばしくて、噛み締めると中に入っているクリームが蕩けて口いっぱいに甘さが広がる。
「美味しい」
思わずぽろりと言葉がこぼれた。


