前方を見つめながらヘリオトロープがフードを被った。
「じゃあ、行くぞ。くれぐれもお姫様ってばれないようにな」
「・・・当然でしょ」
「どうだか。王族はろくでもない奴ばかりだからな・・・すぐに権力を振りかざしたがる」
「きみは偏見が凄いよね・・・」
「お前だって王族だからな、信用できるわけがない」
「・・・いいよ別に。きみに信用される必要ないから」
飽きたとばかりに黙り込むヘリオトロープ。
その横を暫く黙って歩く。
ああ、もう、なんだかこの少年の言葉に無性に腹が立ってしまう。
普段はこんなに何かに心を動かされることはないのに。
このお祭り騒ぎのせいで私の気分も高陽しているのだろうか。
・・・きっとそうに違いない。
もうそれならいっそ、今思っていること全て、言ってしまおうか。
私はたたっと数歩駆け出して振り返った。
僅かに驚いたように目を見開いたヘリオトロープが、夜の街に浮かび上がっている。
私はフードの中からでもはっきりと光る紫の瞳を見つめて声を張った。
「お願いでも何でもいいよ、ありがとう、ヘリオトロープ。私・・・来て良かった」
今だけは、ほんの少し、壁を取り払おう。
折角の外界だ。そして―――もしかしたら、最後の。


