「不快って・・・女の子に向かって言うかな・・・それに、お、お姫様抱っこしてるのきみでしょ!」
「味方でもない奴に抱きつかれるのを他にどう思えと?あとそれは時間が無いから仕方が無くだ。お前の足に合わせていたらここから出られないからな」
「・・・憎まれ口ばっかり」
「何か言ったか?」
「・・・」
ぼそりと呟き腕を緩めると睨まれたので、無視した。
ヘリオトロープに向けていた顔を前に向けるとみるみる近づく城壁。
何か言おうと口を開いたが、その速さに思わず言葉を失う。
つまりは、この速さで少年が走っているというわけで。
上から見ていた実技演習といい、塔に登ってきた時といい、この少年は身体能力がおかしい。
「ぶつかる!」
そんなことを考えながらどうにか捻り出せたのは僅か4文字。
顔を強ばらせる私をちらりと見やったヘリオトロープは、いたって冷静に口を開く。
「・・・ぶつからないに決まってるだろう」
なんでそんなに冷静なの。ああ、もう目の前、ぶつかる―――
思わず目をつぶった私の耳に届いてきたのは、だぁん!という衝撃音。そして、それと同時に体に響く振動。
「え」
ゆっくりと目を開けると飛翔する体。
「と、飛んでる!?」
城壁の上に着地して向こう側に飛び降りたところで、ヘリオトロープは少しの間の後、目を伏せて呟いた。
「・・・そんなわけないだろ。勢いつけて蹴り上がっただけだ」


