すっかり日が落ちてぷかりと星の浮かんだ闇夜を背にし、そんな闇よりもずっと昏い深紫の隻眼でただ私を見据える彼は。
「ヘリオトロープ・・・!」
「何処に閉じ込められるんだろう、とか呟いてたのは、やっぱお前だったか、くだらないことを」
彼は肩からずり落ちていた外套を直しながら、とん、と部屋に降り立った。
私は座り込んだまま尋ねる。
「なんで、ここに」
ヘリオトロープは紫の瞳を細めて不機嫌そうに口を開いた。
「『また』って言っただろ」
「いや、そうじゃなくって・・・」
確かに『また』とは言われたけれど。
どうして、彼がここに来る必要がある?
・・・今、ということに関係があるのか。
「って言うか、きみ、どうやってここまで来たの?こんな高いところ、普通外から来られないでしょ」
それに、あの音。何か道具を使って壁を登ってきたんだとしたら、突然1度だけなんてありえない。
訝しげな視線を向ける私に心なしかヘリオトロープが目を逸らした。
「・・・そんなことはどうでもいい。これを着ろ」
私の質問は完全に無視して、ばさり、と何かを投げて寄こす。
「外套?」
床に座る私の膝の上に広がるそれは、ヘリオトロープの着ているものと似ている分厚い外套だった。
彼の黒と色違いなのか、白だ。大きなフードがついていて、これを被ればすっぽりと顔が覆えそうだった。


