だって、私は自由に外を歩けたところで、奇異の目で見られるのが関の山だ。
それに、別に私も外を歩きたいなんて・・・歩けるなんて思わないし―――
薄闇の中でそんなことを考えていた私の思考は、どがぁん!と壁を揺らした衝撃音で吹き飛んだ。
突然のことにぽかんと呆けていると、窓の下枠に指が掛かる。
「ひっ!?」
窓のすぐ側に立っていた私は堪らず大きく後ずさってぺたんと尻餅をつく。
あいつが、来た、の?
急激に下がっていく体温。
溜っていく沈黙。
ど、どうしたら・・・
ドアを開けて逃げれば良いのだろうが、もう足腰に力が入らない。
声をあげようと口を開けて・・・閉じた。
声が届くはずがないし、何より、誰も私の声がわからない。
聞いたこともないのだから。
私が何も反応しないのに痺れを切らしたのか、外からちっと舌打ちが聞こえた。
『―――私は貴方を助けたい
心閉ざしたものよ、柔らかく笑め!』
ぱあっと光の残滓が外から部屋に入り込んだのと同時に、ぐにゃり、と鉄柵が左右に曲がり人が通れるほどの空間ができた。
荒業だなあ、と目を瞬かせたが、それよりも、この声は―――
「はあ、ったく面倒臭い・・・」
侵入者は片腕だけでひらりと体を持ち上げ、捻じ曲がった蔦に手をやり、たん、と両足を窓枠につく。


