黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う


なんだか、ひたすらに眩しくて。

私は歩み寄ってから、兄様の裾を引っ張った。

「ん?」

目をぱちぱちとさせて私を見つめる兄様は、ああなるほど、とまるで察したように呟いて膝を折った。

「・・・頭でも撫でてくれるのかな?」

そんなことを言ってふざける。きっと本心は何をされるのかとひやひやしているのだろう。

でも、そんなこと、知ったことではない。

私も腰を折り、目線を兄様に合わせる。そのまま、軽く両手の指先で彼の頭に・・・触れる。

兄様が驚いたように目を瞠った。私が自分から触れたことなんて無かったから。

兄様はしばらく目を泳がせていたけれど、ゆっくりと目を閉じる。

兄様の顔をここで見るのも、もしかしたら最後かもな、と。次もし会うとしたら、彼の言う通り国王が変わった後だろうか、いや、そもそもまた会えるのだろうか、と。そんなことを考えながら。


それを確認してから、私は彼の額に、軽く唇を当てた。

ぴくり、と兄様が体を跳ねさせる。

それが嫌悪感から来るものなのかなんなのか・・・は、少し、気になるけれど、私には尋ねる術がないから。

何も気づいていないことにする。


私が体を離して暫くしてから、兄様も静かに立ち上がった。まだ顔は伏せたままだ。

「さっきのお返しかな?はは、そんな、なんか生涯の別れみたいな」

兄様の声が垂れた白い前髪の向こうからくぐもって聞こえる。

私は答えない。・・・応えられない。