ゆらり、ゆらり、と体が揺れる。
・・・触れて、思い出した。小さなときにはあまり変わらなかったのに、と。
いつの間に、兄様はこんなに男の腕になっていたのだろう。
外界を半ば無意識に遮断していた私は、何も気がつかなかった。
兄様は外聞のためかもしれないけれど、城内で私を守ってくれていたのは、この腕だ。
原動力はどうであれ、それは変わらないのだ、と、私は本当はどこかで、わかっていたのかもしれない。
でも、もう反射的に他の人間の行動対して敵意を持って見てしまうのだ。
どうしても、この癖は、抜けそうにない。そうやって他のものを排除して、私の居場所を守ってきたから。
でも・・・
「―――ん?なんだい、アムリィ?」
突然上から注いだ声に驚いて顔を上げる。
どうやら、腕をぎゅっと握ってしまっていたらしく、慌てて力を抜く。
私がヴェールの中で花を指先で弄ると、兄様が笑った気配がした。
「アムリィの好きな花を選んだんだ。って、今は見れないね」
好きな花?・・・あの紫色の花だろうか。いや、まさか。1度も言ったことがないのにわかるわけが。
「気持ち悪いかもしれないけどね、僕はいつだってアムリィを見てきたんだよ。大事な妹、だから。好きな花を当てるくらい聞かなくても造作もないよ。
是非後で見てみてくれると嬉しいな・・・あ、でもここまで言って外れてたら恥ずかしいから、1人の時にね?」


