黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う


オルカイトルムネが兄様を冷たく睨む。

「黙れ。お前はただ、国のことだけ考えていればいい。こいつのことなど、無視しておればいいのだ」

「父上・・・っ」

「まあまあ」

激昂して遂に片足を踏み出した兄様を諌めたのは、意外にもダイアンだった。

「これだけのことでは、まだ何も決まることはありませんから。あまり急いて考えることではないかと。

・・・それに、国王様。あまり独断でお決めになると、“愛しの御方”に嫌われてしまうのではないですか?」

彼の言葉に、はっきりとオルカイトルムネは顔色を変える。

「おいっ、どういうことだ、ダイアン・・・!」

訝しむような、警戒するような、恐れるような、焦ったような、奇妙に歪んだ顔。

ちらりと横目で盗み見ると兄様も困惑した顔をしていたから、訳がわからないのは私だけではなさそうだ。

「お前、一体何を知っている!」

ただ、オルカイトルムネの様子を見るに只事では無いようで。

がたがたと手が震え、顔は白と言っても差支えのないほど青ざめている。

一方、鋭い目で睨みつけられたダイアンはどこか小馬鹿にするような笑みを貼り付け、飄々とした態度を崩さない。

「どうされたのですか?私は嫌われてしまいますよ、とご忠告致しましただけですよ。特に何も知りませんよ・・・何も、ね」

最後の一言で、ちらり、と私を横目で見てくる。

嫌な、笑みを片頬に浮かべたままで。