ぼんやりとそれを聞きながら、私は内心嗤った。
おめでとうございます、なんて。どこがめでたいんだろう。
そうか、でも・・・この国の人達からすれば、そうなのかな。
気味の悪い“籠り姫”が、国の恥が、いなくなるんだから。
ああ、嫌だ、な。
頭に仕上げのティアラを載せられながら、自分でも良く分からない、苛立ちと悲しみの入り交じったような気持ち悪い感情に胸元を握り締めた。
準備を終え淡い紅色のドレスをまとった私は、リーンの後に続いて部屋の外に出る。
後ろで、ぱたんとドアの閉まる音がした。
それは昨日と同じだけれど、同じではない。
腕を組み壁にもたれていた兄様は私たちの姿を認めると姿勢を正し軽く服を払った。
「それでは、行こうか?」
そう言って兄様が先導して歩き出す。
歩調の早い男の足に、ドレスを着ている私は追いつくので精一杯だった。
*
昨日も見た、大きな扉。
はっきりと体が震えるのがわかる。
リーンは到着するや否や、1度素早く深い礼をした後、ほとんど走るように立ち去っていった。
今、兄様と2人、謁見の間へ続く扉と対峙している。
「・・・じゃあ、行くよ、アムリィ。準備は良い?」
そう言ってこちらを見る兄様に、もし『嫌だ!』と言えたらどれだけ良かっただろう。
そんなことができるはずもなく、私は漆黒の瞳を見つめて、力無く頷いた。


