それどころか、少女は私と目が合うと、あからさまに顔を背ける。

いつものことだから、もう今更何も思わないけれど。


「こちらで、いかがでしょう?」

私にドレスを着せ終わったメイドの少女が、姿鏡を私の前に置く。

その鏡の縁は見ていると目が痛くなるほどの豪奢な宝石で彩られていて、この簡素で薄暗い部屋とは全く合っていなかった。

輝くエメラルドやルビーにちら、と目をやった後、私は鏡に映る自分の姿を見つめる。


国一番の仕立て屋が作ったのだろうとひと目でわかる、華やかなシフォンドレス。

重いものなど持てそうもない、すらりと細く長い手足。

毎晩メイドが手入れしてくる、陶器のような白い肌。

さくらんぼのような、潤んだ桃色の唇。

伏せ気味の触ったら溶けそうな、ふんわりとした長いまつ毛。

床まで届くかと思われるほど長い、良く見るとほんのりと薔薇色に光る、老婆のようだがそれでいてつやつやとした白髪。

そして―――薄暗い部屋に爛々と輝く、黄金の瞳。


一目見ただけで隅々まで手の行き届いているとわかる自分の姿に、心底嫌になる。

こんなこと、望んでないのに。

何処か責めるような自分の目と鏡越しに目が合って、ぱっ、と鏡から視線を逸らした。



この、自分の瞳が・・・いちばん、嫌いだ。