「ええ、どういうこと・・・?」
私の頭の中が疑問符で埋め尽くされる。
どこか意味深な言葉にますます疑問が深まっただけだ。
少年は私のそんな様子を横目で見てきた後、ふんと鼻を鳴らした。
「お前にわかるわけがない」
それだけを口にし、彼は分厚い外套を翻して私に背を向ける。
立ち去ろうとする少年に、慌てて声をかける。
「ちょ、ちょっと、待ってよ」
少年は私の言葉なんて全く意に介さないように足を踏み出す。しかし、数歩進んだところでぴたりと歩みを止めた。
無表情な顔は俯けられている。その視線をたどってみると、その先にあったのは私が撫でていた紫色の小さな花だった。
どうしたというのだろう。
息を潜めて見つめる私の前で、少年は不意に腰を屈めた。
それから、私の耳に届く、ぷち、という何かが弾けるかのような微かな音。
「・・・なに、やってるの・・・」
少年は、紫の花を根元に近いところから手折っていた。
私の憤った声には反応せず、少年は外套の中に手を突っ込む。
慣れた手つきで取り出したのは、とろりとした薄い乳白色の液体が入った長細い小瓶。
少年はその小瓶の蓋をきゅぽ、と音を立てて開けると、今までの言動からは全く想像のできない程に優しく丁寧な手つきでその中に茎の端を浸けた。
茎の3分の2ほどが液体に浸かり、その狭い瓶の中で花はぷかりと浮遊する。


