「お前なんか、斬る価値もない」
それは、勝者による最大級の侮蔑で。
「・・・っ!」
マリアはよろりと身体を肘で押し上げると唇を細かく震わせた。
そしてきょろりと一瞬だけ目を泳がせた後、泣きそうに歪めた顔を翻して、逃げるように自分が割ったステンドグラスの穴から身を投じた。
彼女が出ていった辺りを暫く見つめていたヘルはそっと目を伏せて外套を拾う。そして逡巡するように手で弄んだ後、結局羽織らずに片手で抱えた。
「あ、の・・・」
恐る恐る、といった様子で口を開いたのはディランだった。
「ありがとう・・・ございました」
その瞳にはヘルに対する怯えが多少は浮かんでいるものの、ヘルに向かって足を踏み出した。
「あなたの“その姿”については、もう何も問いません。口外もしません」
「・・・別にいいがなどうでも」
そっけなく返したヘルにうっと息を詰めたものの、ディランは今度は私に視線を向けた。
「あなたたちは僕の命の恩人です・・・どうか、僕にお礼をさせてください」
私はその言葉にぴくりと方が上がるのを止められなかった。それは私が、私たちが・・・期待していた言葉だったから。
でもそんな感情をおくびにもださず、私は1度だけこくりと頷く。
それを見たディランは「僕は少し下がりますね」と言って自室に引っ込んでいった。
「本当に強いんっすね、お兄さん・・・」
ドゥケレがぼそりと呟く。
「そうか、そうっすね・・・お兄さんとお姫さんになら、話してもいい気がするっす。と言うか、聞いてもらいたいことがあるっす」


