黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う


その一瞬の間隙を見過ごさずに、マリアが口を開いた。

「『私は貴方を助けたい―――私の脚は羽。私の腕は金槌。私に守る力を、更に』!」

こんなにも起句が合わないBoostがあるのだろうか。彼女は自分の私欲のためだけに、詩を唄う。

詩が完成すると共に、彼女の身体がぱあっと光に包まれる。一瞬彼女の身体が眩んだかと思った瞬間、次に出された突きは、先程の比にはならないほどに早い。

Boostの重ねがけ。ヘルは急激に変化したその早さについていけずに、体勢を崩しながら剣で受け止めた。

かぁん、と音がして両者の得物が跳ね上がる。

はぁっとヘルが大きく肩で息をしたのがわかった。かなり消耗している。

攻撃に転じないヘルの余裕の無さに気がついたのだろう。あと一押し、とでも言うようにマリアは口角を裂いてみせる。

「『私は貴方を助けたい

支え踏まれるあなたたち、もう我慢は要らないわ』」

マリアはそう囁くと、とん、と槍の先で軽く床を叩いた。石畳の部屋にその音が反響する。

何が起こるというのか。そう思った矢先、彼女が叩いた場所が“盛り上がった”。

「『さあ、いらっしゃいな』」

それは生き物のようにめりめりと音を立ててヘルを襲う。

「くそ・・・っ!」

飛び上がりながら比較的安全な足場から足場へ飛び移るものの、硬い石の波には彼の剣技は効かない。

「ふふ、もうそろそろ終わりかしらねぇ?」

マリアもそれに追随するようにヘルに向かって跳んだ。

・・・ああ、このままでは。

きっと以前の私なら、ここで飛び出してしまい、そしてもっと状況を悪化させていたのだろう。でも今は違う。

「・・・ヘル!」

彼を信じて、声の限りに叫ぶ。

ヘルが負けるはずない。ないのだ。

彼はまだ―――全く本気を出していないのだから。