マリアがとんっと窓枠を蹴って飛び降りた。その勢いを殺さないまま、こちらに向かって槍を引き絞る。
「そんなにお望みなら、まずあんたから斬ってやるわよ!」
彼女が狙ったのは、ディラン。
ぼうっとほうけたように立っていたディランは飛びかかってくるマリアに気がついたものの、明らかに回避は間に合わない。
ヘルがマリアの槍とディランの間に体をねじ込んだ。剣の腹で彼女の槍を滑らせる。
「何やってんだ、早く避けろ!」
「でも・・・」
叫ぶヘルにディランがためらうように足踏みする。きっと自分が言ったことを気にしているのだろう。
「お前がいたら邪魔だ!・・・お前には何か叶えたい未来があるんだろう?こんなところで死にたいのか?」
きぃん!と槍を弾いて振り返ったヘルの瞳に射抜かれてディランがはっと息を飲んだのがわかった。何か思うところがあったのか、ゆっくりながらも私たちがいるところまで下がってくる。
それを確認して、ヘルがマリアに視線を戻した。
「余所見するなんて、随分と余裕・・・ねっ!」
ぶん、とおおよそ女性の腕力だとは信じられない強さと勢いで横薙がれる得物をヘルが軽く飛び上がって避ける。
「お前・・・」
何かを察したように呟くヘルに、マリアは嗤った。
「そうよ、わたしは自分の身体に身体強化のBoostをかけてるわ。ふふ、そのくらいわたしには朝飯前よ。舐めないでほしいわね」
そう口にしながら、今度は突きの攻撃に移る。
右を狙い、今度は左。脚を狙っては腕を狙う。
強化された彼女の身体能力はほとんどヘルと拮抗しているように見えた。
一撃の重さはないものの素早く手数の多い槍の攻撃に、やりにくそうにヘルが身をよじる。


