黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う


流れる重苦しい空気を切り裂いたのは、大きな窓が割れた破裂音だった。青空を望むステンドグラスが、ぱらぱらと飛来する。

思わず頭を抱えて庇いながらその方向を見上げると、その窓枠に手をやって身体を支えこちらを見下ろす、1人の女がいた。

「ふぅん、やっぱり素直に交渉に応じたというわけでなかったのね。

あなたたちわたしたちのことばかり貶しているみたいだけれど、話を聞く限りでも充分あなたたち自身もわたしたちを利用しようとしているわよ?気づいていないのかしらね?」

見慣れていた悪趣味な華美なドレスではなく動きやすいストレッチスーツらしきものに身を包んでいるものの、誇示するように高い位置で結ばれたなびく緋い髪と、ここからも伺えるにぃっと横に裂けた笑み。

「もー弓があんなに使えるなんて聞いてないわ。使えない部下たちはわたし以外皆やられちゃったじゃない」

そうあまり残念そうでもなくぼやいているのは。

「マリア・ルクムエルク・・・!」

その呟きは、私が発したのか、それともヘルが発したのか。

「はぁい、久しぶりね、アムネシアスムリィ姫?そして可愛らしい騎士様?

どうやら今日までちゃあんとお姫様を守っていてくれたみたいで、わたし、嬉しいわ、ふふ」

爬虫類じみた笑みでそうのたまうマリアをヘルが憎々しげに睨んだ。

「やっぱりお前が賊の頭だったんだな・・・姿が見えないと思っていたが、まだ諦めてなかったのか」

「諦める?―――うふふ、本気でそんなことを言っているなら、笑ってしまうわ。確かにここ最近数日はセルティカの奴らに手間取っていたけれど・・・そんなの、有り得ないわよ。最後に嗤うのは、わたしたちなんだから」

マリアは恍惚とした表情でうっとりと宙に視線をやる。

そして、自身の得物である槍を撫でた。

「―――だから、そのためには邪魔者は消えてもらうわ。」