黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う


ヘルは私の表情を見て、微かに笑った。そしてスピードを上げる。

ただ疾風が私の頬をなぶる。もうヘルは何も言わなかった。



あっという間に森を抜ける。知らずのうちにほっと息をついていた私は、ドゥケレの視線を追って顔を上げた。

鬱蒼とした森に囲まれて高く屹立する、白く大きな城。その立派な姿は見るものに自然に畏怖を抱かせる。

ヘルに降ろされた私は思わず足を止めかけたものの、そのまま歩みを続けるドゥケレを見失わないように慌てて追いかけた。ドゥケレはまだ険しい顔をしたままだ。

ヴァンパイアの少年は自国の城の門を全くと言っていいほど躊躇無くぐり抜け、声を上げた。


「・・・ディラン様、連れてきたっすよ」

それはあまり大きな声ではなかったけれど、その声に反応して薄暗い広いホールの奥から人影が歩み寄ってきた。

薄闇から滲むように現れたその人物は、かつん、と踵を鳴らして私たちの前で立ち止まる。

「お疲れ様でした、ドゥケレ」

そう声をかけて労うのは、ヴェルメリオ国王、

「・・・ディラン、だね」

私の呼びかけにちらりとディランは視線を向けた。

「やっぱりあなた、話せたんですね」

そう言って微笑む。ドゥケレが文献を読むと言っていたから、もう驚きはない。その顔には驚くほど邪気が無くて、とても何かを企んでいるようには見えなかった。

「ドゥケレ、首尾はどうですか?“あの人たち”も、ちゃんと連れてきましたか?」

「連れては来たっすけど・・・あいつら、無茶苦茶っすよ、攻撃してきましたし・・・あんな奴らと交渉なんて、するもんじゃなかったっす!ディラン様の思い通りになんていくかわかったもんじゃないっすよ!」

「・・・ドゥケレ」

きっと喋りすぎているのだろう。彼を諌めるように静かにディランが名を読んでも、ドゥケレの勢いが収まる気配はない。

寧ろ更に声を張り上げる。