黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う


困惑する私たちを他所に、ドゥケレは真紅の瞳を普段の巫山戯た様子からは想像もできないような色に染めて、忌々しげに追手がいるであろう方向をぎりっと睨んだ。

「約束が違うじゃないっすか・・・オレたちも舐められたもんっすね。だからオレは反対したんっすよ、卑劣な人間風情と利害関係なんて結べるわけがなかったんっす」

そして手早く弓を手に取ると、力いっぱい引き絞って、ためらうこともなくそちらに向かって数発矢を放った。

命中したのかはわからない。ただ明らかにざわついた気配がして、がさがさっと音を立てて人影が木の合間を縫って逃走していくのが遠くに見えた。

ドゥケレが弓を持ったまま腕をだらりと下ろし、こちらを振り向いた。

その顔は不自然なほど無表情だった。まるでせめぎ合う感情を押さえ込んでいるような。

「・・・行きましょうっす」

吐息混じりにそう言うと、さっと弓を担ぎ駆け出した。

私たちはその只事ではない様子に顔を見合わせながらも、追いかけて走り出す。ヘルが走りながらひょいと私を抱え上げた。

いつもと同じ、お姫様抱っこ。

何故、と思っていたが、今となっては当たり前だと、そう頷ける。

彼の背には、大きく美しい片翼があるから。

だからヘルは、その両腕で私を守るのだ。

「・・・気を張れよ」

ヘルが私の耳元で囁いた。

「多分、この先何かが仕込まれている」

私は唇を軽く噛んで、頷く。もう何があったとしても覚悟はできてる。