「―――?」
どうしたの、と呼びかけたつもりだった。
「―――?―――っ!」
・・・声が、出ない。
確かに息は流れているのに、喉は震えているのに、声が出ない。
無理矢理力を込めたために涙の滲む目でヘリオトロープを見つめると、彼は不自然に静かな顔でこちらを見返していた。
黄金の瞳が無表情に爛々と輝いて、私の姿をただ映している。
・・・怖い、と。
私がそう思った瞬間、ヘリオトロープは口をかぱりと開けた。
「『返してやろう汝の元へ』」
「―――、あ・・・っ」
突然声が戻ってきて、思わず咳き込む。ひゅうひゅうと、喉が嫌な音を立てる。
「な、何をしたの・・・?」
ヘリオトロープが薄く笑った。
「お前の声を『奪った』んだ」
「・・・『奪った』?」
意味がわからない。でも、確かにさっきのあれは、そうとしか形容できないような気がする。
「そう、俺の力はな、『全てを奪う』力。俺は母を見舞いに来てくれていた人々の視覚を・・・奪ったそうだ」
俺の能力が発動したのは多分それが初めてだったんだろう。とヘリオトロープは遠い目をして、片頬を吊り上げた。
「怖かっただろ?俺の力は。国の連中も、同じことを思ったんだろう。
それにやろうと思えばもっと違うものだって奪えるからな。もっと、大切なものも・・・」
その彼の黄金の瞳に閃く昏い光に、私は思い出した。
あの時、彼のあの言葉に私が目を開けた時のことを。
地面に一瞬で倒れて、光を失った瞳を私に向ける、賊の姿―――
あの時、確か「気を失っているだけだ」とヘリオトロープは言っていた。それがなぜわかったのかって、それは彼が賊たちの意識を『奪った』からだったのだ。
そう考えれば・・・そんなことができるのなら、あの時あの人たちにとどめを刺すことだって、容易だったに違いない。


