「どういう、こと?」
そんなの有り得ない。有り得ないはずなのだ。
だって・・・ヘリオトロープはヒューマンなのに。Boostが使えることが、何よりの証拠。
混乱し目を瞠ったまま呆然とする私の前で、ヘリオトロープは次に外套に手をかけた。
何があろうとも脱がなかったそれは、今彼自身の手によってあまりにもあっさりと、取り払われる。
数瞬だけ宙に浮かんだ悪夢のようなその外套は、ぱさりと音を立てて床に落ちた。
そしてその中にずっと押し込められていた、ものは。
ばさりと不自然な風が私の頬を打つ。
部屋を照らしていた月光が何かに遮られるように勢いを失う。
「ヘリオトロープ、きみ、それは・・・」
薄暗い部屋に、仄かな燐光を纏って立っているのは、私の見たことのない、知らない、
片翼の騎士だった。
私の良く知っている少年が、良く知っている顔で、良く知っている剣を携えて―――あるはずの無いものを、背負っている。
大きな、片方だけの、透き通るような美しい翼。
その美しさ故に片翼という歪さがさらに強調されていて、見る者に無条件に不安定さを覚えさせた。
美しいのに、危なっかしくて。触れるのを、ためらう。
私の視線を見てヘリオトロープが自嘲気味に笑った。
「・・・そうなるだろ?俺はお前なんかよりも、ずっと醜いよ」
「ち、ちがう!そんなはず、ない!」
この言葉は真実だ。確かに驚きはした。畏怖に似た感情を抱きさえした。でも、醜いだなんて。


