ヘリオトロープはしばらく返事をしなかった。でもどうやらそれは別に返事をためらう逡巡というわけではないようで。
ヘリオトロープは私の肩にぽすっと頭を落とした。そのまま私の髪に顔をうずめるようにして、囁く。
「・・・聞いて。隠していることが、ある」
くぐもったその声は聞き取り辛かったけれど、確かに頼りなく揺れていた。
「・・・何?」
私の声もつられて揺れた。
ヘリオトロープが肩の上でふっと少し微笑んだような気配がして、顔を起こす。
「ずっと、隠していた。できれば、最後まで隠すつもりだった。知られたくなかったから。
言いそびれていくうちに、どんどん言えなくなってしまった。
色々偉そうなことを言ってきてしまったが、俺はな・・・死ぬほど卑怯なんだ」
その紫の隻眼は、らしくもなく不安気にふらふらと揺れている。
ヘリオトロープは鼓動を落ち着かせるように大きく息を吸って、胸にそっと手を当てて、握り締めた。
「―――俺は、お前と、一緒なんだよ」
そう吐き出すように囁かれたその言葉の真意を、私は掴むことが出来ない。
「一緒・・・って、一体、どういうことなの」
ヘリオトロープは私に引きつった笑いを見せるとその問いには答えずに、左眼を覆う銀の眼帯に指をかける。
傍目にもその指先はぶるぶると震えていたけれど、白くなるほど力を入れて、ヘリオトロープはそれを剥ぎ取った。
ずっと隠されていた彼の左眼が露わになる。
てっきり失明しているか、眼球がないのか、そんなところだと思っていたのだけれど。
「・・・な?」
その囁きと共に私を初めて見つめるその瞳は差し込み始めた月の光に照らされて、
“私と同じ”、黄金色に輝いていた。


