「ほら、な。早く素直になれば良かっただろ」
今まで見たことのない微笑みに、優しい顔に、息が詰まる。
この少年は本当に、いつも私に不機嫌そうな無表情を向ける、あのヘリオトロープなのだろうかと、信じられなくなりそうなくらいだった。
「・・・なんで、ヘリオトロープはそんなに私に構ってくれるの?」
ヘリオトロープは、母様の“お願い”のために私といるのに。
ああ、嫌だな。胸が苦しくなる。こんな思いをしたくないから、ヘリオトロープに気持ちを伝えていないのに。
私がヘリオトロープのこと、
「―――好き」
だって。
「・・・・・・え?」
私が言ったのかと思った。違う、私じゃない。
ヘリオトロープが私の瞳を見つめている。彼は唇を開いた。
「お前のこと、好き、なんだよ。だから放っておけないんだ」
その、何よりも嬉しいはずの言葉を、何よりも嬉しいはずの人から聞いたというのに、私の口から漏れ出たのは自分を落ち着かせようと無理矢理出した苦笑だった。
「・・・何言ってるのヘリオトロープ。そんなの、今更信じられるわけがない。きみはずっと母様のために私を守ってきたんでしょ?」
だってそんなの、有り得ない。そんな都合のいいこと、ある訳がない。
「お前なあ・・・」
ヘリオトロープは苛立ったようにため息をついて、私の体を離した。
顔を伏せながら、私は笑った。きっと酷く引きつっていたと思う。
面倒臭い、って呆れられたのかな。でも、変な勘違いをして辛い思いをするくらいなら、その方がずっと―――
そう思った時、ぐいっと顎がすくい上げられた。私の視界が広がって、でも私が見えるのは、目の前にあるこの紫、だけ。


