「・・・そんなこと、してない」
「している。今だってそうだろ。家族を失って悲しくないわけがない。そんなときくらい・・・縋ればいいじゃないか、他人に。」
例えば、俺に。そうその瞳が囁いているような気がして、そんなのは幻聴だと、私の願望だと捩じ伏せる。
「だから、そんなことないって、言ってるの!」
まるで言い訳がばれた時の子供のように、私は言い張る。
「・・・やめてよ。そんな眼で、見ないで。本当だって、言ってるのに・・・っ!」
声が抑えようもなく震える。それでも絞り出した言葉に、ヘリオトロープは薄く吐息を漏らした。
「嘘だな」
と、それだけ短く呟いて。
私をぎゅっと、強く、抱きしめた。
「ほら、こんなに震えてるのに、何強がってんだ」
私を責めるようなその言葉は、凄く素っ気ないけれど。そこに含まれる色は、どこまでも優しい。
「・・・震えてなんか、」
「隠せるわけないだろ、こんな距離で。そんなに言うなら、俺から離れればいい」
震えてないって言うなら、それは何も怖くないってことだろう?それなら俺は要らなかったな、とヘリオトロープは腕を解こうとする。
するりと私を包みこんでいた力が、緩まって、熱が離れていく。
「・・・いや、待って!」
冷静に考えるよりも先に、気がつけば私はヘリオトロープの体にしがみついていた。
「嫌、どこにも、行かないで」
自分でも何を言っているのかわからない。見ないでと言ったり、行かないでと言ったり。
でもヘリオトロープは隻眼を緩めて私に優しく微笑んだ。


