「随分簡単げに言うな」
「簡単っすもん。オレはこのままお姫さんの所に行って肩を抱いて甘い言葉を囁いて慰めろって言われたらできるっすよ。だって、なんとも思ってないっすから。お兄さんはできないんっすか?」
「・・・」
「お兄さんは、怖いんっすね」
不意に落された言葉に、俺はびくりと肩を揺らした。
「・・・は?何言ってんだ、お前・・・」
はは、と笑い飛ばしてやろうとするものの、口から漏れ出るのは引きつった吐息だけ。
「お姫さんに怯えられるのが怖い。拒否されるのが怖い。要らないと言われるのが怖い。・・・嫌いだと、言われるのが怖い。違うっすか?」
「何を、巫山戯たことを・・・」
「自分の気持ちを誤魔化すのなんて簡単っすよ。全部違う、って潰していけばいいんっす。
でも、本当にそれでいいんっすか。お兄さん。オレがちょっと見ただけでもわかるくらい、お兄さんがお姫さんを想ってるのなんて―――ばればれっすよ」
「・・・想っている?俺が、あいつを?」
ただ繰り返す俺にドゥケレが呆れたように向かって首をすくめた。
「はぁー、何でわかんないんっすかねー。さっきのだって、お姫さんにあの新聞を見せるなって言ったのは、お姫さんを悲しませたくなかったからっすよね」
「・・・そんな、俺があいつのために、なんて、有り得ない」
そうだ。だって俺は、あの人の“お願い”のために、あいつを守っているだけで、あいつのために行動するだなんてそんなことはあるはずが無くて。
ずっとプレティラ様としか関わってこなかった俺が、他人“あいつ”に何か特別な感情を抱くなんて、そんなことは。
「・・・何がそんなにお兄さんの邪魔をしているのかわかんないんっすけど、ちゃんと天秤にかけた方がいいと思うっすよ。
“今”、何が一番大切なのか、を」
そんな俺の葛藤を見透かすかのように、ドゥケレが深紅を細めた。


