・・・こんなセカイ。いつどこで、何が起きたって・・・誰が死んだって、おかしくなんかない。
もっと沢山笑いかければ良かった。ちゃんと私の声で話せば良かった。
「そうだね、メルレア、こんなにも後悔って、辛いんだね・・・」
目を閉じて兄様の顔を思い返そうとして―――茫然とした。
兄様の顔が、良く、思い出せない。
人との交流を絶ってきた私は、私を包む壁の向こうの外のセカイを、まともに見てこなかったのだ。
「嘘・・・」
私は猛烈な恐怖にただ震えた。
もし明日、大切な人がいなくなったら?ヘリオトロープが・・・死んだら?
私は1人でどうすればいいんだろうか?私は、ちゃんとヘリオトロープを見ているのだろうか?
彼をずっと忘れずに、いられるのだろうか?
あの少年のお陰で笑顔を取り戻した私は、あの紫を忘れてしまえばきっともう、生きていけない。
私は膝を抱えて、急激に忍び寄る恐怖に、ただただ身を縮めた。
◆*◆
俺は形容のし難い感情に足を取られていた。
怯えるように俺を見て後ずさった彼女。
ああ、おれは拒否されたのだと、そう思った瞬間、何故か足が動かなくなった。あんなにのろのろと動く少女1人くらい、すぐに追いかければ、間に合ったのに。
何なんだ、この、胸を締め付けるような、感情は。
「お兄さん、追いかけないんっすか?」
そう言って俺を上目遣いで見やるドゥケレ。
・・・元はと言えばお前のせいだろう。
そのくらい言ってやろうと思ったが、邪気の無い深紅の瞳に俺は抗議の声を飲み込んだ。
「・・・あんなに怯えられたんだ。お前が行けばいいんじゃないか」
そう言うと、ドゥケレは不思議そうに俺を見つめた。
「どうしてっすか。お姫さんを心配してるのはオレじゃなくてお兄さんっすよね?行けばいいと思うんっすよ」


