「いや、すみません、遅くなったっす!なんかもうほとんど無かったんすよねぇ、皆破って持ってったんすかね。
広場で一部だけ見つけたんすよ、ほら、読んでくださいっす」
ばん、と派手な音を鳴らしてドアを開けたドゥケレが、ぶんぶんと嬉しげに新聞を持った手を振る。
そちらに近づこうとしたけれど、私が動くよりも早くヘリオトロープがその新聞をひったくった。
「ちょ、お兄さん何するんすか!?」という抗議の声をまるっきり無視して、ヘリオトロープがそれに視線を落とした。目まぐるしく左右に走る眼球が、彼が尋常ではない速さで文面を追っているのがわかる。
しばらくその隣でぐるぐる回っていたドゥケレだが、我慢しきれなくなったようにヘリオトロープの手から新聞をすっぽ抜いた。
「あ、おい!駄目だ!」
「何が駄目なんっすか。そうやって一人占めしてないで、お姫さんにも見せてあげてくださいっす」
そう言って唇を尖らせるドゥケレに、ヘリオトロープが懇願するように手を伸ばす。
「頼む、止めてくれ、こいつに見せるな!」
でもそれより先に、はいっす、とドゥケレから私の手に、新聞が渡った。
私はちらりとヘリオトロープを見た。はっきりと焦りの色が浮かんでいて、私と目が合ったのに気がつくと激しく首を振った。
でも、それでもヘリオトロープは私から無理矢理それを奪おうとはしない。彼の瞳にはもう諦めの色が浮かんでいる。
多分―――いや、絶対に、私はこれを読まない方がいいのだろう。
でも、都合の悪いことから目を逸らして、私だけのうのうと過ごすなんて、耐えられないから。
覚悟を決めて、私は大きく息を吸った。そして、恐る恐る視線を落として、ゆっくりと文字を追う―――


