昨日泊まった―――まあ正確には私は止まっていないけれど―――宿と同じ場所。
ドゥケレが何のためらいもなく、いっそ鼻歌交じりにドアを開けるのを見て、慌てて私は声をかけた。
「ちょっと、私たちほどではないにしろ、他種族は良く思われてないでしょ、なんでそんなに無用心なの?」
昨日は誰もいなかったけれど、今日はいるかもしれない。そう私が言うとドゥケレは物凄く不審そうに眉をひそめた。
「・・・何言ってるんすか?誰もいるわけが無いじゃないっすか」
・・・どういうことだろう。
でも眉をひそめたヴァンパイアの少年はもう答えてくれそうもなかったので、とりあえず後に従う。
扉をくぐって中に入ると、やはり目を覆いたくなるような散らかりようだった。
「やっぱり凄いことになってる・・・何があったんだろう」
思わず呟くと、今度こそばっとドゥケレが私を振り返った。
「さっきから何言ってるんすか、本当。大丈夫っすか?
当たり前っすよ、ヒューマンは皆、頑丈な城塞の中に避難してるんすから。
・・・まさか、知らないんっすか」
「し、知らない・・・よね、ヘリオトロープ」
「・・・ああ」
私たちの返事にドゥケレが信じられないものを見るような目を向ける。
「新聞とか読んでないんっすか」
「そんな余裕は無かったからな」
ヘリオトロープのあっさりとした答えにドゥケレが深くため息をついた。
「・・・ちょっとだけ待っててくださいっす。」
そう言って扉を開けて出ていく。おそらく彼の言う新聞が広場かどこかに貼ってはいないかと探しに行ったのだろう。


