皆の視線が集まる中扉の向こうから現れたのは1人の少年だった。
私たちと同じようにマントを羽織り、背に弓と矢筒を携える彼は、おおよそ普通の旅人に準じた格好でなんら不自然な点はない。
ただ、深く被ったフードが払い除けられ、少年の頭部が露わになった時、私は思わず息を飲んだ。
「どうして・・・ヴァンパイアが、こんなところに」
私が零した囁きに、少年は夜のような漆黒の髪を揺らし、血のような深紅に妖しく輝く瞳を細めて、笑った。
「いやっすねぇ、なんでそんなに警戒するんっすか?ただの旅人が普通に武器屋に来ただけじゃないっすか」
三人三様に浴びせられる視線に、少年は場違いに巫山戯た仕草で、両手を掲げ、首をすくめてみせた。
「・・・嘘をつくな」
ヘリオトロープが苛立ったように、しゃらんと音を立てて剣を引き抜いた。青白く光る切っ先を、少年に突きつける。
「ひえー、おっかないっすね。まあ、お察しの通り嘘なんっすけど。
頑張って探し当てたと思ったらこの仕打ちっすかー」
少年は言葉とは裏腹に全く怖がっていなさそうな声色で、ヘリオトロープに向けて両の手のひらを見せて降参の姿勢を取った。
ふん、とつまらなそうに鼻を鳴らしてヘリオトロープがとりあえず剣を下ろすと、少年は深紅の瞳で私をじっと見つめてきた。
「今日はお迎えに上がったんすよ、アムネシアスムリィ姫。
妖精王“ティターニア”と人間王の間に生まれた、忌まれし破滅を喚ぶハーフエルフ・・・これ以上に心を掻き立てる煽り文句なんてないっすよねぇ」
「・・・何を、知ってるの」
震える私の声に、少年はいっそ優しいまでの笑顔で口を開いた。


