黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う


私はまた素っ気なく頷いてさり気ない動作で身を翻した。

この夜の出来事は全部、メルレアとふたりだけの秘密にしたいから、ヘリオトロープにだって教えられない。

と言うより、とてもではないけれど言うことなんてできない。私の気持ちを避けて彼女との会話を説明するのは、きっと至難の業だから。

不機嫌そうな空気を隠すことも無く私をじとっと睨むヘリオトロープを意識して無視して、私は前を向いた。

「ヘリオトロープ、着いたみたいだよ」

こじんまりとした小さな店。そしてかかった古ぼけた看板に、武器屋を表す槍と剣が交差した紋章が小さく壁に描かれている。昨日も訪れたあの店。

ドアノブに手をかけた私を、ヘリオトロープが遮った。

「お前、大丈夫なのか」

きっと昨日のダイモスとのやり取りのことを言っているのだろう。

「大丈夫」

だから私は気丈に頷いてみせた。昨日の私とは、違うから。

私の手に押し開けられた扉が、からんころん、と軽快な音を立てる。

その音に、昨日と同じように店の奥にいた人影が振り返った。

「来たか」

足早に近づいて、立ち止まって彼の藍銅鉱の瞳をしっかりと見据えた。そして、力強く頷く。

「うん。」

それ以上は何も言わない。ダイモスも身動きすらしないまま、私を見つめ返す。

そのままどれだけの時間が経ったのだろう。息の詰まるような空気が暫く流れて、それから偉丈夫は無精髭を揺らして笑った。

「・・・良い眼だ」

短く発されたその言葉に目を瞠る。

ダイモスは私に光沢を放つ布に包まれた長細い物を差し出した。

「あの後、冷静に考えればワシがお前さんに無理難題を言ったのだとわかってな。詫びようと思っていたんだが・・・その必要は無くなってしまったようだ。

昨日の間に、何かあったのだな」