「うん。とっても、とっても・・・大切。
私に、あたたかさを、教えてくれた・・・」
あの少年に対する気持ちを、大切、だなんて言葉では言い表したくないけれど、それ以上の言葉を私は持っていないから。
私に欠けていた色々なものを、彼は無愛想な顔で、ぶっきらぼうな言葉で、仕草で、少しずつ、埋めていってくれる。
毎日繰り返されていく日々は同じ彩なんかじゃなくて、全部違うんだってこと。
夜が怖くない、寂しくないってこと。
そして、他人“ひと”はあたたかい、ってこと。
メルレアは私の声に、そして強い視線に息を飲んで、『強くなったね』と文字を並べた。
「会談で出会ったあの時から?」
メルレアは少しだけバツの悪そうな顔をして首を横に振った。
『ううん、違うよ。私たちは一度、サイエルムナで出会ってる』
その地名に、はっとする。
そうだ、男たちに斬られそうになった、あの時。
私たちを包み込んだあの液体は、やっぱり崖の下から伸び上がった海の水だったのだ。
メルレアが操っていただなんて、夢にも思わなかったけれど。
黙り込んだ私に何を思ったのか、偵察だよ、偵察!と弁明するように彼女は走り書きする。
『その時は正直、こんな弱々しい女の子が、本当に?って感じだったけど。
なるほど、きっとその人のお陰だね、きみが短い時間の中でこんなにも変われたのは。』
「うん・・・」
緩む頬を抑えられず俯く私の視線の先で、メルレアは地を抉る。
深く、でも今度は優しく。


