砂浜を削る彼女の指が、感情を堪えるようにぶるぶると震えて、一段と深く地を抉った。
『私は大馬鹿者だった。私を慕ってくれている仲間達を忘れて、恋にうつつを抜かして。長だという自覚が足りなかった。
そんな過去を、変えたくて』
彼女の指が、表情が、それが真実なのだと告げていた。
マーメイドが口をきけないことに、そんな背景があっただなんて。
いや、正確には口を“きかない”なのか。
メルレアは昂る感情を抑えるように大きく深呼吸して、手の力を抜いた。
『だからね。もしその力が手に入るのなら、何の容赦もしないつもりだった。
あの日光の柱を見て、もしかしたら、って。
きみを傷つけてでも、その力は私たちのものにするつもりだった。だから1人の時を狙ったの』
そうか、一歩間違えていれば本当に危なかったのだ。そうやっと理解した私は、ぞっと背中を粟立たせた。
顔を強ばらせる私にごめんね、と彼女は小さく指を動かす。
『文字にすればするほど、私って馬鹿だね。
もう、何も変えられないのに。後悔したって、遅いのに』
最後にそれだけを綴って砂浜を手のひらで軽くなぞって文字を消した彼女の肩に、私はとうとう手を伸ばした。
ぎゅっと強く、その濡れた体を抱き締める。
「ううん。メルレア。あなたは間違ってない。
私があなただったとしても、きっと同じことをしてたから」


