異種族間の結婚はご法度。
恋をするのに制限はかけられるはずもないが、もし想いが通じあったとして、その先には何も・・・無い。
賢い彼女は、自分のその感情がどうしようもないものだとわかっていたに違いない。それでもなお、その人を好きなってしまったのだ。
私の目に含まれるものがわかったのだろう。彼女は再び苦笑いして、手を動かした。
『そうだね、私だってその時限りの気持ちのつもりだったんだよ。でもあの男の子はすっごく無鉄砲でね?私に会いに来たの。海の中だよ、本当に危なかったんだから。
もう、本当にタリオったら』
どうやらタリオという名の少年らしい。
メルレアはまるで少年が目の前にいるかのように、眉を吊り上げぷくっと頬を膨らませてみせた。
でもすぐに彼女の顔は弛緩する。
地面に視線を落として、文字を書く。でもその指先は、まるで重りがついているかのように遅い。
『もうそこからは私の気持ちは募るばかりで。陸と海。住む世界の違った私たちは、言葉を交わすこともできなくて、もどかしくて。
彼のそばで、すぐ隣で、緒に笑いあっていたくて。
私は禁忌に手を出してしまった』
「・・・禁忌?」
ただならぬ言葉に私は首を傾げる。
『昔ね、海の奥底には、呪いを得意とする魔女が居たの。
その人にお願いして、私は人間の言葉がわかるようにしてもらったんだよ。でもそれには条件があった。3日の間に想いを伝えられなければ、声を奪うという、ね』
「そんなの、卑怯だよ!だってメルレアは言うはずないのに。その魔女は、絶対にメルレアの声を奪うつもりだったんだ・・・!」
私の憤る声にメルレアは藍色の瞳を細めた。同意するように頷く。


