「な、なに?」
『きみはエルフなのに魔法が使えないみたいだけど、一体何の“力”を持ってるの?
あんな濃密な力の気配。あれだけの魔力を放出するんだから、絶対に何かの“力”を持っているはずだと思うんだけど』
「・・・魔法が、使えない?」
確かにさっき、私の力じゃないのに水が不自然な動きをしたような気はしたけれど、どうしてそんな風に言いきれるのだろう。
訝しげな私の視線にメルレアが『だって』と書いたものの、続きを書かずに手のひらで擦って消した。
視線を一瞬だけ落としたものの私をまた見据え直して、彼女は指を走らせる。
『もしかして、Boostとも魔法とも他の能力とも違う、特別な力を持っているんじゃないの?
例えば―――時間を巻き戻したり、とか』
必死の形相で私に顔を近づける彼女に私はぎょっとして体を反らす。
「そんな力、持ってない」
信じられない、という風にじっと見つめてくる藍色の瞳を暫く見つめ返しているとそれが嘘ではないとわかったのだろう。メルレアは力無く肩を落とした。
先程の威勢はどうしたのか、しゅんと項垂れる彼女に私は思わず手を伸ばそうとしてはっとした。
どうして、何もできないのに助けの手を差し伸べようとしてしまうんだろう。
でも、その姿は種族の長なんかにはとても思えなくて、縋るものを失って絶望にうちひしがれる少女にしか見えなくて。
私は伸ばした指を折り握りしめて、そっと手を降ろした。
その代わりに、彼女に尋ねる。「どうしてそんな力が欲しいの?」と。


