黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う


目を閉じ、月の光を追い出して、一度大きく息を吸う。

「・・・だからこそ、このままでは駄目」

ほとんど自分に言い聞かせるように私は呟いた。

今までの私に、

決別を告げるために。


「ヘリオトロープの隣にいられるように、私が自分の足で立たなきゃ」

不甲斐ない私のままではきっといつかは置いていかれてしまうから。

ヘリオトロープが手を離せば、呆気なく私たちの距離は開いていく。

だから、ダイモスのためでも誰のためでもなく、私自身のために。

私は変わりたい。

現実を、運命を―――受け止めたくないと、そう訴える卑怯な心がまだ邪魔をするけれど。

少しずつでも、格好悪くても。

ねえ、ダイモス。

私は、あなたが望むような存在ではないんだよ。

ただの女の子でしかないんだよ。

―――“まだ、今は。”


自分を変えたいと願うのなら、自分を受け入れるところから始めなければ。

私は海辺に歩み寄った。しゃがみこんで、恐る恐る水面に触れる。

波に従って弾く水が、軽く火傷した指先をひんやりと覆った。

この水も、自然の一部。それなら当然、エルフの血を引く私には自在に使役することができるはず。

今までは、自分が魔法を使えると試してみたいとも思わなかった。だってそれは、私がやはり異端なのだとそう現実を見ることになるから。

私はダイモスが魔跡を浮かばせたときのことを思い起こした。特に呪文などは唱えていなかったような気がする。

私は立ち上がって海に向かって両手を伸ばした。まだ手を下ろそうとする無意識の気持ちに腕がぶるぶると震える。

そんな自分を叱咤するように水面をきっと見据えた、その時。