黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う


外套の前をしっかりと合わせ、フードを限界まで引っ張る。そうしないと外套の隙間から燐光が漏れ出てしまう。昼間ならまだしも、夜闇にはその光は目に痛いほど映える。

私は足を忍ばせてそうっと扉に近づき、ノブを回した。

がっちゃん、と微かながらも決定的な音がして、冷や汗が背筋を伝う。

ヘリオトロープにばれれば即座に連れ戻されるだろう。あのどこまでも“お願い”に従順な少年が、私を守ることのできない場所にひとりで行かせるはずがない。

だから、私は気づかれないように、宿を抜け出した。

それは勿論、なんだかんだ初めてであるひとりでの外出を不安に思う気持ちは大きい。

正直に言えば、少しでも気を抜けば膝ががくがくと震えてしまいそう。

でも、私に何かあったとき、いざとなればどんな状況下でもきっとヘリオトロープが助けに来てくれるはずだと・・・そんな強烈に矛盾した自分勝手な信頼を、私は抱いているから。

彼がいない時だって、彼への想いが、ためらう私の背中を押す。

私は1人、洋燈に照らされる静かな暗闇の中に微かに届く音を頼りに歩き始めた。



強く夜風が私の体を煽る。ここまで来る間もやっぱり人影は無かったけれど、用心してし過ぎるということは無い。頭を抱えるようにしてフードを抑え込み、そして空気を胸いっぱいに吸い込む。

一度だけ嗅いだ、潮の鼻を刺すような独特の匂いが鼻腔を満たす。

サイエルムナにだけでなく、まさか王都にも海に面している場所があるとは思わなかった。

常識的に考えれば海に面していなければ大型船なんかも使えないわけでそのように国の中心である王都を建設することは少し考えにくいのだけれど、生憎私にはそれを実際に体感する機会はなかったから、少しだけ驚いた。