まあ、それに、と無精髭を擦りながら偉丈夫は遠い目をする。
「本当のところ、ワシはお前さんに僅かばかり親近感を抱いているんだよ―――アムネシアスムリィ姫。
半妖精“ハーフエルフ”であるお前さんと、僅かばかりエルフの力を持ったワシと。
・・・あの日、空を裂き高く高く昇っていく黄金の光の柱を見て、それがあの口のきけない唄国の姫様の力なのだと耳に入った時。そしてエルフの存在が、もはや文献上のものではないのだとわかった時。
ああ、あんなにも異質で美しく気高いものがあるのだと―――
ずっと疎ましく思っていたワシのこの魔法も、きっと何らかの意味があるのだろうと・・・そう思った。
お前さんがワシのその剣を持ってここを訪れた時点で、運命はぴたりと嵌ったのだ」
どこか縋るような、いっそ崇拝するような色を含んだその視線に、私は思わず後ずさりする。身震いをするように小刻みに首を振った。
「そんなこと・・・言われても。私には、何もわからない・・・」
ダイモスがそんな私を追いかけるように私の黄金の瞳をじっと見つめてくる。その奥を、本当は弱くて臆病な私を、見透かされてしまいそうで怖い。
「アムネシアスムリィ姫。お前さんはそう言えば逃げられると思っているのだろう。
だがな・・・同じようなことを思っている者はワシだけではないよ。それ程までにお前さんの存在は大きいのだ。
お前さんだってわかっているだろう?」


