「これは」
視線を上げてクワオアの顔を見ると、彼女はふわりと微笑んだ。
「プレティラ・・・あなたのお母様の、羽を結晶化させてペンダントに加工したの」
「羽、なんでクワオア、が・・・」
言いながら、思い出した。そういえば母様は、“妖精なのに羽がなかった”。
「キミに、そしてプレティラにあたしが禁術をかけたあの日。彼女はお礼に、と言って自分の羽をあたしに渡したの。命ではないけれど、エルフにとっては大切なものだから、きっと何かの依り代に使えるはずだって。感謝の意をこめてあなたにあげたい、と。
プレティラには悪いけれど、何にも使うつもりはなかったの。・・・昨日までは。あたしにとっては彼女との大切な思い出だったから。でもわかったの。今が使い時だ、きっと今のためだったんだって。
このペンダントを握ってこう唱えるの。『汝、其の姿惑せ』。
1度だけなら、種族間を飛び越えてだってどんな姿にでも変わることができる。でも禁術は重いわ。耐えられるのは1度だけ、よ。使いどころを間違えないで。大切に使って・・・」
私はその言葉を聞きながら不意に手のひらがじんわりと熱を持ったような気がした。
母様の存在が、まだここにあるのだと。そう感じて。
私は万感の思いを込めてクワオアに頭を下げた。
「ありがとう。本当に・・・ありがとう」
きっと手放したくなかっただろう。彼女がこのセカイに遺した最後の物なのだから。
それでも、娘である私に託してくれた。
私はもうそれ以上クワオアの目を見られなくて、顔を上げたあと彼女の顔をまともに見ないままくるりと背を向けた。


