私がそう尋ねるとクワオアは一瞬ためらった後、王都よ、と小さく囁いた。
それを聞いて絶句する私とヘリオトロープの顔を見て、クワオアが苦笑を零しながらため息をつく。
「まあ、そうなるわよね。でも『今は王都に居る』って便りに書いてあったのよ」
そしてヘリオトロープに向かって1枚の紙切れを差し出した。
それを一瞥してヘリオトロープが訝しげに目を細める。
「王都のこんな辺鄙な場所に店を構えて、やっていけているのか。誰も来ないだろう、こんな場所」
「あのひとはあまり人目に触れたくないようだから。本当に職人気質というか何というか・・・まあ、ともかくそこにいるのは確かよ」
クワオアが呆れたように首を数度軽く振った。彼女の様子からうかがうになかなか偏屈な人物のようなので少し不安に思う。
そんな私の顔を見てクワオアが苦笑いをして己のふさふさとした耳を撫でた。
「・・・そんなわけだから。その地図はあげるわ。」
「ああ・・・そろそろ、出発しよう」
ヘリオトロープが相槌を打ち、また窓を見て呟く。
「うん」
白い外套を羽織り直し、私は毛布を置いて立ち上がった。
前を歩くヘリオトロープが扉に手をかけて開けた丁度その時、後ろから不意に声がかかった。
「―――そのまま出て行くつもりなのかしら」
「・・・え?」
振り向くとクワオアが立っていた。伏せられたその顔の表情は窺えない。


