黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う


「じゃあ、もうそろそろお別れ、かしらね」

私はクワオアの場違いに明るい声に思考を遮られて首を回す。

私は反射的に頷いて、そのままの姿勢で固まった。


・・・私たちは、これからどこへ行こうというのだろう?


ヘリオトロープの顔を見上げると、彼は紫の隻眼で私をただ見つめ返す。

「ねえ、どこへ・・・行くの」

そう零した私の声は頼りなく震えていた。

ヘリオトロープはそれを聞いてからも、全く表情を変えない。鏡のような深紫の瞳の表面に私の不安気に歪められた顔を映して、口を開く。

「俺は、お前が行くところへ従いていくだけだ」

「・・・」

何でこんな時には、何も言ってくれないの。

私には、まだ目指すべきもの―――新しいセカイが、見えていないというのに。

目標の見えないまま、過程を辿ることなんてできるわけが無い。

・・・私が望むセカイって、何?

考えられない。わからない。わからないのに、障害だけは多すぎるほどあって。

ルクムエルク家を始めとする、ヒューマンから常に身を狙われ。

未だ関わっていない他種族の思惑はわからないまま。

そして思い出したくも無い―――“あいつ”の存在。

あの不気味に嗤う道化師の仮面が脳裏にちらついて気分が悪い。

考えようとすればするほど思考がみるみるうちに真っ黒に塗り潰されていくようで、知らず手を握った。


「・・・アムネシアスムリィ姫」

自分の名前が呼ばれたことに反応して私は顔を跳ね上げる。

視線をのろのろと上げると優しげに細められた瞳と目が合った。