「あたしじゃないわよ。」
「やっぱり・・・そうだよね」
想像通りの返答にため息を漏らす。
ということは、やっぱりこれを掛けてくれたのは。
こん、と申し訳程度のノック音がして部屋の扉が開いた。
「あら、あたしたちも結構早いと思ってたのだけれど」
「俺はいつもこれくらいだが」
そちらの方を振り向くクワオアの声に、ヘリオトロープが気怠げに目を細める。
その首筋にはまだ僅かに汗がきらめいていて、きっと本当はもっと早く起きていて鍛錬を終えてここに来たのだろうと思った。それでもなお、彼はその分厚い外套を脱ごうとしない。
「それに、できる限り早く出発した方がいいだろうからな」
そう言ってヘリオトロープが横目で窓を見やる。
まだ朝日は昇っていない。水平線の向こうから、ほんのりと橙の光が滲んできているだけだ。
それでも本来ならもっと薄暗いうちから出発した方が良かったのだろうから、私はいたたまれない気分になってぎゅっと毛布を握り締めた。
「・・・起こしてくれたら良かったのに」
「面倒臭い」
素っ気なく言い放つ彼の言葉に、私は軽く唇を噛む。
「でも・・・きみ、これ・・・」
毛布を掛けてくれたのがクワオアでないなら絶対にこの少年のはずで。それなら、私を起こすことだって当然できたはずなのに。
でもヘリオトロープは、そうは言っても確信を持てず目を泳がせる私をちらと見て鼻を鳴らしただけで、肯定も否定もしなかった。
寝させてくれたのかなと思わなくもないけれど、ヘリオトロープが私にそんなに気を使うと思えないから、違うだろう。
彼の最優先はいつも“プレティラ様”。


