もういい加減、俺だってお前が本当はそんなことができるほど強くないことなんてわかってしまった。
ひとこと俺に言えばいいだけなのに。
『たすけて』と。
「・・・なあ、言えよ。たすけて、って」
そうしてくれないと、むしろどうしようもなく気になって仕方が無いのだ。
目を離せばすぐ危ないことばかりして。できもしないのにひとりでできると思い込んで。
自分以外には何の興味もないのかと思えば、不意に驚くほど無邪気に顔をほころばせる。
ふわふわ、ふわふわして、呆気なく手をすり抜けていってしまう。
黙って俺の背に隠れていればいいのに。
そっと閉ざされたまぶたに触れた。
「・・・アムネシア」
俺を惹き付ける黄金の瞳が隠れている間でしか。
彼女を振り向かせ得るだろうこの言葉を―――俺は言うことができない。
◇*◇
冷たい床に身震いして目覚める。
・・・ヒューマンとして。
その感覚はどことなくあの塔の石床を彷彿とさせて懐かしく感じた。
でもあそこはもう過去の場所だから。それ以上は何も、もう思わない。思っては、いけない。
体を起こすとばさりと何かが滑り落ちた。
外套とはまた別に、何かが体に掛かっていたようだ。
「・・・毛布?」
クワオアが持ってきてくれたのか。昨日のあの感じだと、そうとも思えないのだが―――
私はとりあえずそれを抱えて、部屋へ戻る。
もう起きていたクワオアにそれを差し出すと、彼女は訝しげな顔をして首を振った。


