私が口を閉ざしてから、暫くヘリオトロープはじっと私の目を見つめていた。
それから、一瞬ほんのりと目尻を緩めて、
「・・・そうか」
と、それだけを私に言った。
その表情にまた違う―――今度はむず痒い羞恥がむくむくと湧き上がってきて、私は目を泳がせながら捲し立てる。
「えっと、自分でも、頭の中ぐしゃぐしゃで、何言ってるのかわからないんだけど・・・!」
「まあ、いいんじゃないか。
口に出したら自分が思っていることが多少は整理できてすっきりするだろう」
辿々しく喋る私を見やるヘリオトロープはもう仏頂面に戻っていた。でも、やっぱりその声はどことなく優しい。
私の心を抉るようなことを言ってきたのに。
でも、と。その時のヘリオトロープの視線を、話し方を思い出して私は微かに首を傾ける。
・・・もしかして、あれは、私にこれを言わせるため?
いや、さすがに、考えすぎかな・・・
顔を窺ってみても、もう彼の顔は無表情に固まっていて何も察することができなかった。
そこでクワオアの姿が視界の端に映ってはっと我に返った。
「あ、ごめん、なさい・・・話していたのはクワオアとだったのに、」
首を竦めて彼女を放り出していたことを詫びる。
するとクワオアはゆるゆると頭を振った。目尻は下がり唇は柔らかな弧を描いている。
「ううん、いいわよ。」
その微笑みは外見に似合わない慈しみを含んでいて、彼女が本当に永い年月を過ごしてきたのだとそう改めてわかった。


