「私は、このセカイに生きている意味があるのかな。だって、もう母様はいない・・・私のたったひとりの絶対的な味方は、心の拠り所は、いなくなってしまったのに。それなら、私は・・・
そもそも私がいるから、こんなことに、」
訥々と零す私の言葉は、顎がぐいっと掬い上げられたことによって途切れた。
「い、痛いよ、ヘリオトロープ・・・っ」
文句を言おうと横目で睨もうと見つめた彼の表情がはっきりと歪んでいて、私は思わず息を飲む。
怒っているのだと思う。思うけれど、そのひとことだけで表すことはできない。どこか悔しげに、彼の唇は色が変わるほど噛み締められていて。
紫に滲む隻眼は怒っていると言うにはあまりにも優しい。
なんだかその顔が見ていられなくて、顔を逸らそうとするけれど、ヘリオトロープはそれを許してはくれなかった。
彼の手に力がこもる。唇が震える。
それは、何の震えなのだろう。
「・・・お前は、本気でそんなことを言っているのか」
「そんなこと、って」
「母様がいなくなった?だからセカイに生きる意味が無い?何故そんなことが言えるんだ!
気がつかないのか。それを言うことで、プレティラ様の―――“お前”の母親のお前に対する想いを、踏み躙っていると。
無事で生きていてほしいという想い。お前が死んだら、プレティラ様は報われないだろ・・・」


