母様は勿論好き。でも、それが愛なのかどうかと言われると、すぐには頷けない。
本来なら親から注がれてくるはずだったそれを、私は感じることができなかったから。
母様を責めようというわけではない。そうではなくて単純に・・・わからない、のだ。
目を泳がせる私を見て、クワオアが続ける。
「言葉で説明するのは難しいのだけれど、愛っていうのは・・・そうね、その人のことを、唯一無二の存在で、何にも代えがたいと、そう思うの。
その人が居ることが当たり前で、いなくなった瞬間、自分のセカイにぽっかり空白が開くみたいな、そんな虚無感がするのよ」
私はその言葉をゆっくりと咀嚼する。
確かに、それは・・・家族に沸くのが当然の感情といえる。
「愛・・・私も、母様を愛していたの、かな」
そう呟いた途端、なんだか胸の辺りがすうっと嫌な感じがして強く手のひらで押さえる。
そう口に出してしまえば、自分でも知らない間に押し込めていた想いが、溢れ出てしまいそうになって。
“愛”という感情はわからないままなのに、その言葉に身体は敏感に反応する。
中と外に引き摺られて、どちらにも傾けずにぐらぐらする。
私はがくん、と膝からくずおれた。
「アムネシアスムリィ姫?」
「ねぇ、クワオア・・・」
心配そうな口調で呼びかけてくるクワオアの顔は見ることができないまま、彼女の指先を見て問う。


